研究概要 |
(平成12年度)A. actinomycetemcomitans (Aa)の莢膜様多糖ならびにS. mutansの細胞壁多糖の合成に関わる遺伝子をクローニングした。クローニングした遺伝子の塩基配列を決定して、この領域に存在する遺伝子について相同性の検索を行ったところ、グリコシルトランスフェラーゼをコードしていると予想される数種の遺伝子を特定できた。 (平成13年度)クローニングした遺伝子を大腸菌に発現させて、各遺伝子産物の詳細な機能の解析を試みた。この結果rgp遺伝子群の最上流に位置するrgpA遺伝子産物が最初のラムノース残基を転移するグルコシルトランスフェラーゼであることが明らかとなった。また、野生株のXc株ならびにXc41株の抗生物質に対する薬剤耐性を比較することで、血清型特異細胞壁多糖がS. mutansの薬剤耐性に重要な働きをしていることが明らかとなった。 (平成14年度)血清型a型のAa SUNYaB 75株の染色体遺伝子からGDP-D-mannose 4,6-dehydrataseならびにGDP-keto-6-deoxy-D-mannose reductaseをコードしている遺伝子をクローニングした。さらに挿入失活を行い、血清型a, c, d型莢膜様多糖抗原を失った変異株の作製に成功した。また、これらの変異株の各種抗生剤に対する薬剤耐性を調べたところ、いずれの変異株もバシトラシンおよびバンコマイシンに対する感受性が僅かに高まっていた。 (平成15年度)S. mutansのrgpCおよびrgpD遺伝子を大腸菌で発現させて、発現したタンパク質を精製し、これを抗原として抗体を作製した。得られた抗体を培地に添加して、S. mutansを培養したが、細胞壁多糖合成を効果的に阻害することはできなかった。そこで、抗体をリポソーム中に取り込ませて培地に添加し、その効果を調べたところ、細胞壁多糖合成阻害の傾向が若干認められた。Aaについても同様に、莢膜様多糖の合成に関与すると考えられるABCトランスポーターをコードしていると予想される各遺伝子産物に対する抗体を作製して莢膜多糖の合成阻害を試みたところ、何れの場合もわずかではあるが阻害効果が認められた。
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