研究概要 |
Porphyromonas gingivalis(Pg)は成人性歯周炎の原因菌として最重要視されており、本菌の線毛はその組織定着因子であることが示されている。本研究の達成目標は、実験動物においてPgの上皮細胞への付着を抑制できる抗体を誘導し得るような合成ワクチンを創製することである。本年度の研究において、Pg線毛に対するマウスモノクローナル抗体(mAb)を作成した。樹立された種々のmAbの反応特異性と機能を解析したところ、Pgの付着を抑制するmAbは線毛重合体の高次構造を特異的に認識するものであることが示唆された。M13バクテリオファージのgp3遺伝子内に18merのランダムペプチドを組み込んだファージディスプレイペプチドライブラリーから、前述の特異性と機能を有するmAbであるPfyx 205(IgA,k)およびPfyx 206(IgG1,k)との間に反応性を示すファージクローンのスクリーニングを行った。1次スクリーニングで選択された種々のクローンのうち、最終的にPfyx 206に対する特異性が確認された1クローン選択し、挿入遺伝子のDNA配列を解析した。その結果、挿入ペプチドの推定アミノ酸配列はQAAAQDVWGVHTAGSAAGであり、線毛の259番目から272番目までのアミノ酸配列LAAAQAANWVDAEGと部分的な相同性が認められた。現在、さらにもう数クローンのPfyx 206特異的なファージを得てペプチド配列を比較すべくファージのスクリーニングを継続するとともに、上述の1クローンの表現するペプチドの合成に取組んでいる。また、ヒトの歯周炎患者における線毛の強い免疫原性が、一般定期健康診査時に得られた血清中の抗体価測定により確認された。
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