研究概要 |
我々はこれまでにPorphyromonas gingivalis(以下P. g)のペプチドグリカン合成過程に重要な酵素の一つであるmurC遺伝子の構造と機能を明らかにした。この領域は大腸菌におけるmra領域(murein sythesis cluster a)に相当しており、murC遺伝子の下流に3つのORFが存在し、それぞれが大腸菌のFtsQ、FtsAおよびrtsZに対して高いホモロジー(16%,33%,54%)を示すことがわかった。P. gFtsZは、他菌種FtsZと同様GTPase活性を有するが、以下の点でユニークな性質を示すことがわかった。すなわち、1)GTPase活性がNa^+やK^+によって活性が阻害されること、2)Mg^<2+>非存在下でも活性を有すること、およびEDTAによって活性が阻害されないことが明らかとなった。また、P. gFtsZの(末端deletion mutantを作製して、大腸菌におけるfilamentationの変化を観察したところ、C末端から177アミノ酸をdeletionしたmutantでは、filamentationがみられな<なることからT281からR329の49アミノ酸基内にP. gFtsZの機能に重要な領域が存在することが示唆された。そこで細菌由来のFtsZについてアラインメント分祈を行ったところ,A32Oを中心とした10残基からなる保存領域がすることを見いだし,A-domainと名付けた。site-directed mutagenesis法により作製されたAla320をターゲットにした2つの点変異株(A320HおよびA320R)では,P. gFtsZタンパクの発現によってfilamentationが観察されず,コントロールと同様の形態を示した。またA-domainのG322の点変異株においても同様の結果であった。これらの結果からP. gFtsZのAla320とGly322が細胞分裂に重要な役割を有していることが示唆された。A-domainは他の歯周病原因菌においても存在していることから、A-domainを標的にした歯周病治療薬の開発に向けた糸口が得られたと考えている。
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