研究概要 |
1.パラメンタン型モノテルペンヒドロペルオキシド類の抗トリパノソーマ活性 光学活性なリモネン,4-テルピネオールおよびそのアセテート等を光増感酸化により酸素酸化してパラメンタン骨格の1位或いは2位にヒドロペルオキシドを有するモノテルペンを合成し,更にこれらを還元して対応するアルコール体を得た.これらの化合物についてTrypanosoma cruziのepimastigoteに対する殺虫活性を比較したところ,アルコール体は活性を示さず,ヒドロペルオキシド体にのみ活性が認められたことから,活性はヒドロペルオキシ基に由来するものと結論した.またヒドロペルオキシ体では,アルコール等の極性基を導入すると活性が減少し,化合物の疎水性と活性との間にある程度の相関が見られた.更にHeLa細胞感染系における抗トリパノソーマ活性を検討した所,リモネンから導いたものは1μg/mlでHeLa細胞には毒性を示さず,強い感染抑制効果を示した. 2.天然モノおよびセスキテルペノイドの抗トリパノソーマ活性 駆虫活性モノテルペンascaridoleを含むChenopodium ambrosioidesの成分を検討し,l-limoneneを光増感酸化して得られるものと同一の4種のモノテルペンヒドロペルオキシドを得た.一方,マレーシア生薬Michelia albaの抗トリパノソーマ活性成分を検討し,costunolide, dihydrocostunolide, parthenolide, dihydroparthenolide等,計12種のテルペン化合物を単離した.これらのうちcostunolide等のα,β-不飽和γ-ラクトン部を有するセスキテルペン化合物は,細胞毒性を示したが,dihydrocostuslactone等のα,β-不飽和結合を持たない化合物には細胞毒性がほとんど見られず,トリパノソーマに対して選択的な毒性を示すことが明らかとなり,抗トリパノソーマ薬の新たなリードとなりうるものと考えられる.
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