研究概要 |
HIV-1 Tatタンパク由来のペプチドTat-(48-60)とのコンジュゲーションにより、外来タンパクを細胞内に導入できることが知られている。Tat-(48-60)はRNA結合ペプチドであることから、我々は蛍光ラベルした種々のRNA結合ペプチドを合成し、それらの膜透過能と、ペプチド、タンパク質の細胞内導入キャリアとしての可能性について検討を行った。その結果、用いたRNA結合ペプチド10種のうち9種について細胞内導入が観察され、これらのうち良好な細胞内移行を示したペプチドを用いて分子量約29,000のカルボニックアンヒドラーゼも効率よく細胞内に取り込まれることが分かった。これらの結果から、このような効率的な膜透過はTatペプチドに特有のものではなく、アルギニンに富む塩基性ペプチド広く一般に見られることが示唆された。また、膜透過機序の検討により、従来知られているエンドサイトーシスとは異なる取り込み機序が存在することも示唆された。 我々は、次に、4〜16残基のアルギニン残基からなる蛍光ラベルしたペプチドを合成し、配列中のアルギニン残基数の影響を調べた。その結果、アルギニン4残基のものはほとんど細胞内に移行しなかったのに対し、8残基のものは非常に効率よく細胞内に移行した。しかし、アルギニンの数がこれより増えるに従い、逆に細胞内への移行は起こりにくくなることがわかった。これらのペプチドとカルボニックアンヒドラーゼのコンジュゲートを調製したところ、取り込み効率に関して同様な鎖長依存性が見られた。以上により、細胞内移行にはアルギニンのみならず、その数も重要な働きをすることが示唆された。これらのペプチドの細胞内導入法をもとに、現在、転写因子の活性化制御を目指したペプチドの設計を行っている。
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