研究概要 |
標的遺伝子のmRNAに相補的なオリゴヌクレオチドを細胞へ投与し、当該遺伝子の発現のみを特異的に抑制するアンチセンス法は新しい疾病の治療法として注目を集めている。我々は既に糖部立体配座を固定化した架橋型人工核酸BNAの合成に成功している。本研究では、糖部立体配座を固定した新規ヌクレオシド類縁体(各種BNA類)をオリゴヌクレオチドへと導入し、アンチセンス分子として必要とされる種々の特性について詳細な評価を行なうと共に、新たなBNA類の開発を推進し、以下のような成果を得た。 (1)2',4'-BNAを導入したオリゴヌクレオチドが生体内に近い条件下、標的となるホモプリン-ホモピリミジン二重鎖DNAと安定な三重鎖核酸を形成することを見い出した。 (2)2',4'-BNAの核酸塩基部に各種の複素環(非天然核酸塩基)を効率的に導入する新たな手法を開発した。 (3)標的となる二重鎖DNA中にCG塩基対が存在すると三重鎖核酸形成は極めて困難であったが、綿密に分子設計した非天然型核酸塩基を持つ2',4'-BNAにより、このCG塩基対を認識し、安定な三重鎖核酸を形成することが可能となった。 (4)2',4'-BNAの糖部やリン酸ジエステル部等にさらなる化学修飾を施した超機能性人工核酸類を設計し、その合成に成功した。また、それら新規な人工核酸類の物性を詳細に検討し、優れた二重鎖、三重鎖形成能及び酵素耐性能等を見い出した。 (5)培養細胞系において、2',4'-BNA修飾したアンチセンスオリゴヌクレオチドが、標的となる遺伝子の発現を特異的に且つ効果的に抑制することを明らかにした。 (6)アンチセンス分子として広く用いられているホスホロチオエート型オリゴヌクレオチドに見られる非特異的な遺伝子発現抑制効果(細胞毒性)が2',4'-BNAオリゴヌクレオチドでは認められないことを確認した。
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