研究概要 |
本研究は、標的指向性、機能性、生体適合性などを強化した新規環状オリゴ糖を開発し、ペプチド・蛋白性薬物のDDS(Drug Delivery System)への有効利用を企図するものである。本年度は、安価で包接対象の広いβ-シクロデキストリンを原料に用いて、親水性、疎水性、荷電性のシクロデキストリンを構築し、それらの包接機能並びに薬物担体特性に関する以下の基礎的知見を得た。 1.β-シクロデキストリンに各種置換基(アシル、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシメチル、硫酸基など)を導入した誘導体を高収率に合成し、各種担体特性(溶解性、安定性、油/水分配特性、界面活性、吸湿性、粘着性、膜形成性、生分解性、生体適合性溶血作用、皮膚・粘膜・筋肉刺激性)などに関する基礎的知見を得た。 2.上記シクロデキストリンとペプチド・蛋白性薬物(インスリン、酢酸ブセレリン、シクロスポリン、タクロリムスなど)との相互作用を各種スペクトル法(UV,CD,FT-IR,蛍光,NMR)、断熱型示差走査熱量測定、粉末X線回折などにより検討し、包接部位、相互作用機構、複合体の結合定数、化学量論などを明らかにした。 3.インスリンをモデル薬物に用いて、経皮・経粘膜透過性、組織移行性、溶解時の凝集体形成、熱安定性に及ぼす各種シクロデキストリンの影響を予備的に検討し、吸収促進機構の解明並びに今後のin vivo実験への手掛かりを得た。 上記知見は、高機能性担体としてのシクロデキストリン誘導体をペプチド・蛋白性薬物の製剤素材に利用し、経口・注射・経粘膜・経皮ルートなどに適用可能な生体適合性に優れる新規素材の開発研究を展開する上で有用な基礎資料になるものと考えられる。
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