研究概要 |
本研究は、BLMにより抑制されていた相同組換えがどのようなタンパク質によって担われているのかをBLM欠損細胞を用いて解析することにより明らかにするとともに、BLMの機能を抑制することにより種々の高等真核細胞で効率よくtargeted integrationを起こす方法を確立することを目的にした。阻害剤の開発では、よい阻害剤を見いだすまでにはいたらなかったが、BLMの機能やBLMが欠損した状態で起こる組換えに関し以下のような知見が得られた。 1.BLM^<-/->DT40細胞を出発材料にして、DNA組換えに関係する遺伝子、RAD51、RAD54、MRE11との二重破壊株、及び、BLMとATM、RECQL1、RECQL5遺伝子の二重破壊株を作製して解析することにより、BLM遺伝子破壊株で上昇する姉妹染色分体交換(sister chromatid exchange, SCE)は主として相同組換えにより形成されること、この組換えにはATMやMRE11の寄与は小さいことを明らかにした。また、BLMの機能が欠損した状態でRecQL5がその機能を部分的に代替することが明らかになった。一方、BLM遺伝子破壊株で頻度の上昇するtargeted integrationにはATMが関与することが明らかになった。 2.酵母のSGS1遺伝子(BLMの酵母相同遺伝子)破壊株の解析により、Sgs1は通常の増殖条件では、組換えを抑制しているが、DNAに傷害が誘導された条件では、DNAトポイソメラーゼIIIとともに機能して組換えに関与することが明らかになった。 3.DT40細胞を用いてBLMの機能が欠損した状態でのtargeted integrationにRecQL1あるいはRecQL5が関与するか否かを検討し、RecQL5がtargeted integrationに関与する可能性を示唆する結果を得た。
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