研究課題/領域番号 |
12557212
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高倉 喜信 京都大学, 薬学研究科, 教授 (30171432)
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研究分担者 |
山下 富義 京都大学, 薬学研究科, 助教授 (30243041)
山岡 清 京都大学, 薬学研究科, 助教授 (50109013)
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キーワード | 固形腫瘍 / ドラッグデリバリーシステム / 局所投与 / 遺伝子治療 / プラスミドDNA |
研究概要 |
癌化学療法あるいは癌遺伝子治療において、治療目的に投与する抗癌剤や遺伝子の作用を集中させ全身的副作用を軽減することを目的に、固形腫瘍を対象に腫瘍支配動脈を介してあるいは腫瘍組織内に直接、これらの薬物を投与する方法が試みられており、簡便かつ実用性の高い投与方法として注目を集めている。本アプローチの最適化を目指して、種々のデリバリーシステムの開発も活発に進められているが、十分な成果は得られていない。投与した薬物の物理化学的性質、腫瘍局所での薬物動態と効果や毒性との関連などを的確に把握し、得られた情報に基づいて合理的なデリバリー戦略を構築することが必要と考えられるが、腫瘍局所における薬物動態に関する情報は極めて乏しいのが現状である。そこで本研究では、局所投与によりヒト固形腫瘍へ抗癌剤や遺伝子医薬品を効率よくデリバリーする技術を開発するために必要不可欠な腫瘍局所での薬物動態を評価するための実験解析系確立を試みた。ヒトの系確立に先立ち、遺伝子医薬品についての基礎情報を得る目的でプラスミドDNAをモデルとしてマウス固形腫瘍の系で検討を行った。プラスミドDNAを水溶液の形で腫瘍内投与した際、投与部位から比較的速やかに消失し、リンパ節への蓄積が認められたことより、一部はリンパ系を介して吸収されることが示された。蛍光標識体を用いて組織内分布を検討した結果、投与後10分で既に一部のプラスミドDNAが細胞内に取り込まれている様子が観察された。また、有意な遺伝子発現も得られることが示され、特別なデリバリーシステムを適用しないプラスミドDNAの水溶液投与が腫瘍内投与方法の一つとして有用である可能性が示された。さらに特定のポリアニオンを共存させることにより腫瘍内投与後の遺伝子発現が有意に阻害されたことから、何らかのポリアニオンを認識する機構を介して細胞内に取り込まれている可能性が示された。
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