研究課題/領域番号 |
12557213
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
工藤 一郎 昭和大学, 薬学部, 教授 (30134612)
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研究分担者 |
上野 晃憲 北里大学, 薬学部, 助教授 (00112657)
中谷 良人 昭和大学, 薬学部, 講師 (80266163)
村上 誠 昭和大学, 薬学部, 助教授 (60276607)
杉本 正道 中外製薬(株), 研究所, 主任研究員
奈良場 博昭 国立循環器病センター, 薬理部, 研究員 (90296517)
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キーワード | PGE2 / PGE2合成酵素 / シクロオキシゲナーゼ / Hsp90 / 大腸癌 / アラキドン酸代謝 / 炎症 |
研究概要 |
本研究では、申請者が同定した二種のPGE2合成酵素(PGES)に関する生化学的基盤を確立し、それぞれの酵素の生理的役割及び病態との関連を明らかにすることを目的とした。これまでの研究を通じて、以下の事実が明かとなった。 cPGES :本酵素は分子量23kDaの細胞質蛋白で、殆ど全ての細胞組織に普遍的かつ構成的に発現されていた。構造的には、Hsp90結合蛋白として知られているp23と同一であった。本酵素はCOX-1と選択的に機能連関し、即時的PGE2産生に関与することがわかった。更に、cPGESの活性調節機構について、以下の興味深い機構を見い出した。(1)Hsp90と会合したcPGESが活性型であり、cPGESとHsp90の会合は細胞活性化に伴って促進された。ゲルダナマイシンによりHsp90を不活化すると、cPGESによるPGE2産生は阻害された。また、グルココルチコイドはHsp90と本酵素の会合を阻害することにより即時的PGE2産生を阻害した。(2)cPGESは細胞活性化に伴い、細胞質からCOX-1の存在する小胞体膜に移行した。(3)cPGESはリン酸化を受けることがわかった。(4)cPGESはalternative splicingにより組織発現の異なるアイソフォームを生じ、各々のアイソフォームのPGES活性(Km, Vmax)は全長cPGESとは異なっていることが明かとなった。 mPGES : 本酵素は18kDaの核膜蛋白で、炎症刺激により種々の細胞組織に発現が強く誘導された。構造的には、microsomal glutathine-S-transferaseファミリーのクラス1に属していた。本酵素はCOX-2と選択的に機能連関し、遅発的PGE2産生あるいは誘導性の即時的PGE2産生に関与することが明かとなった。特異抗体を用いた組織染色により、本酵素がリウマチ性関節炎滑膜細胞、大腸癌組織、C型肝炎感染肝組織、心筋梗塞巣、脳血管内皮細胞に存在していることが示された。また、COX-2とmPGESを共発現したHEK293細胞株は癌形質を獲得し、ヌードマウスで腫瘍を形成した。COX-2依存的な細胞増殖を示すヒト大腸癌細胞株HCA-7ではmPGESも高発現しており、逆にCOX-2依存性のない大腸癌細胞株ではmPGESの発現も低かった。COX-2が一部の癌(特に大腸癌)の悪性化に関与するという疫学的見地と照合すると、mPGESがCOX-2の下流で癌の進展に関与しているものと考えられた。
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