研究概要 |
世界に先駆けて見いだしたペプチド性HIV第二受容体(CXCR4)拮抗剤を基盤分子として新規のエイズ化学療法剤を開発することを目的として以下の研究を行った。 (1)低分子CXCR4ケモカイン受容体拮抗剤の開発: 兜蟹由来のペプチド性CXCR4拮抗剤T22を範として、低分子化高活性誘導体T140を見いだし、NMRおよび分子動力学計算(CHARMm)により本物質の溶液構造を解析した。さらに、Ala-scanおよび塩基性アミノ酸のCit-scanによるSARによりT140の活性Pharmacophoreを同定した。その結果T140の4個のアミノ酸(2-Arg,3-Nap,4-Tyr,14-Arg)が高活性発現に必須であり、またこれら4アミノ酸が空間的に極めて近い位置に配置している事を明らかにした。さらに、立体構造研究、SAR研究より得られた情報を基に一連の誘導体を分子設計・合成し、高活性かつ低防毒性を有する新規化合物TC14003およびTC14005を見いだした。また、有機金属試薬の特性を活用した独自の非ペプチド化法により、T140の部分的非ペプチド化を計り、活性を保持したまま、生体内安定性を向上したTM140およびT(E)140を見いだした。 (2)HIVプロテアーゼ阻害剤の改良 本研究では、ペプチド性CXCR4拮抗剤をHIV宿主細胞への特異的送達ベクターとして利用することも一つの目的としている。本年は逆転写酵素阻害剤,AZTとT140とのコハク酸リンカーを介したコンジュゲートを合成し、in vitroアッセイ系における有効性を確認した。さらに、同様な目的に供するために、独自のHIV多剤耐性克服型プロテアーゼ阻害剤の開発を目的として、既知の構造情報を基にしたコンビコンビナトリアル合成によりnMオーダーの抗HIV活性を有する新規化合物を見いだした。
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