研究課題
トランスジェニックゼブラフィッシュ胚を用いて、(1)変異原性のアッセイ、(2)艀化率、(3)形態形成異常、という複数の指標を用いた総合的毒性評価法の開発を行っている。今年度は、形態形成異常の定量化を中心に検討した。様々な化学物質(ベンゾピレン、MeIQxなど)や環境中の汚染水抽出物に曝露すると、形態異常として、体軸の屈折、胸部の膨潤(同時に体軸が短くなっていることが多い)がよく観察された。そこで、体長の測定により形態異常が簡便に定量化できるか検討するために、変異原物質N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(MNNG)を用いた実験を行った。MNNGに曝露した胚から艀化した稚魚は、一見未処理群と同じであったが、接眼ミクロメーターを備えた顕微鏡で体長を測定すると、濃度依存的に、数%ずつ、有意に短くなっていた。さらに、突然変異頻度は、MNNG濃度依存的に有意に高くなっていた。以上の結果から、体長の測定を毒性評価の指標として使用できる可能性が示唆された。本トランスジェニック魚を用いた変異原性検出法は、生じた突然変異の塩基配列を調べ得るという特徴がある。そこで、MNNGや、水環境中によく検出されるベンゾピレンによって生じた突然変異の塩基配列を決定し、そのスペクトルを調べた。すると、これらの化学物質に特徴的な塩基置換が生じており、本トランスジェニック魚を用いた検出法の有用性が示唆された。
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