研究概要 |
本研究の目的は、(1)医療現場で手軽に使用できるCdZnTe検出器を用いたX線CT装置のスペクトル測定システムを確立すること、(2)患者の被曝線量を低減するために、X線CT装置の基礎データとして、各種CT撮影条件下でのX線スペクトルを測定して、X線の線質を改善し、さらに散乱X線のスペクトルも測定して、このスペクトル測定システムの適用範囲を明らかにするとともに、これを使った品質管理システムを開発するための研究を始めた。以下に、これまでの研究実績の概要を述べる。 H社、S社及びT社の3社のCT装置について、CT診断時の撮影条件である管電圧120kV、管電流140mA(H社)、250mA(S社、T社)で、X線管から放射された一次X線を直径2cmの円筒形のカーボン散乱体で90°散乱させて、散乱X線スペクトルをCdZnTe検出器で測定し、その補正データからクライン-仁科の微分散乱断面積の式を用いて、一次X線スペクトルを逆算して求めた。求めた一次X線スペクトルは、各社のCT装置のフィルタの違いによる線質の違いを反映して、異なった一次X線スペクトルが得られた。また、求めた一次X線スペクトルを高純度Ge検出器で測定されたBRHのスペクトルデータ及びモンテカルロシミュレーションから求めたスペクトルと比較した結果、その形状がだいたい一致することが確かめられた。さらに、H社のCT装置で、各種撮影条件(管電圧:100,120,130kV、管電流:50,100,175,250mA)での一次X線スペクトルを求めて比較した。その結果、管電圧が大きくなるとWの特性X線がより顕著に大きくなった。また、管電流が大きくなるとスペクトルが相対的に高エネルギー側にシフトすることがわかった。この原因は、管電流が大きくなると管電圧脈動率が変化するためと思われる。
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