本研究の目的は、これまでに蓄積された日本人集団における様々な遺伝病の遺伝子変異データを実際の臨床に還元し、広く遺伝子診断に用いるために、新しい遺伝子診断法を開発することであった。この目的の達成のために、DNAマイクロアレイ法を採用して検討を試みた。変異検出にあたっては、蛍光標識したヌクレオチドを基質としたミニ・シークエンシング法を用い、スライドグラス上に各変異検出用のためのシークエンシング用オリゴヌクレオチドを固相化し、サイクルシークエンスを行うことによって、変異の有無の検出をおこなった。しかしながら、固相化されたオリゴヌクレオチドの反応時の洗浄による脱落は著しく、グラス表面の化学処理法を変更しても十分なsignal/noise比を得ることはできなかった。そこで、研究代表者が別に考案した新しい技術(DNAスティック法)に基づく点変異検出法を応用してさらなる検討を行った。この新しい手法は、点変異の検出にあたってストレプトアピジン-ビオチンの結合によるDNA断片の補足と、抗ジゴキシゲニン抗体-金粒子による標識DNAの可視化を行うもので、反応後は電気泳動装置や吸光度計などの機器を一切必要とせず、呈色によって遺伝子変異型を判定する手法である。実験的検討によって、糖原病Ia型、高グリシン血症、各種薬物代謝酵素多型などに対するDNAスティックを設計・作成することができた。この方法は、遺伝子や遺伝子変異の種類に関わらず普遍的に変異を検出できることが確認され、今後、本方法のスケールダウンとマルチプレックス化を行うことによって、既存のマイクロアレイ法に代わりうる遺伝子診断法となる可能性が高いと考えられた。
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