覚醒剤依存における慢性脳障害の解明-脳PET画像解析による研究-

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12557227
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 水柿 道直 東北大学, 医学部・附属病院, 教授 (60004595)
• 研究分担者: 伊藤 正敏 東北大学, サイクロトロンラジオアイソトープセンター, 教授 (00125501) ; 井戸 達雄 東北大学, サイクロトロンラジオアイソトープセンター, 教授 (80134063) ; 佐藤 光源 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (70033321) ; 菱沼 隆則 東北大学, 医学部・附属病院, 助教授 (20199003) ; 谷内 一彦 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (50192787)
• キーワード: メタンフェタミン / PET / ヒト / サル / 覚醒剤 / ヒスタミン / 脳 / 受容体

研究概要

本研究では、positron emission tomography(PET)画像解析法を用い、視覚的に覚醒剤の脳障害機構を解析することを目的として、MAPの脳内集積性の変化を逆耐性モデルを用いたPET画像解析により検討するとともに、脳内ヒスタミン系の変化などのMAP集積性の変動や脳機能に影響を及ぼす生化学的因子の検討を行っている。本年度は以下の成果を得た。
(1)ポジトロン標識MAPを用いたPET実験
1.MAPの体内動態をPETにより測定する目的で、^<11>C標識化を行い、PET画像化に必要な200MBq以上の放射能量を供給できる合成条件を確立した。製剤化までに要した時間は約40分、放射化学的純度99%以上であった。2.逆耐性サルを用いたPET条件の検討を行った。その結果、サルの麻酔をハロペリドールで行った場合、ハロタンで行った場合に比して顕著なMAP集積性の抑制が認められることを明らかにした。3.MAP逆耐性モデルマウスを用いても、ハロペリドールによるMAP集積性の抑制が認められることを明らかにした。
(2)MAP逆耐性モデル動物を用いた検討
1.逆耐性現象動物で、新しい行動評価スケールとして断崖反応の変化について検討した。2.逆耐性現象は生後発達依存性なので、発達に伴って脳内発現が変化する新規遺伝子の解析を行った。3.覚せい剤とストレスとの互換性に注目し、覚せい剤投与に伴う脳内コルチコステロン受容体の発現変化を解析した。
(3)脳内ヒスタミン系検討
1.ヒトの非侵襲的脳機能イメージング法の開発:ヒト脳における神経受容体測定法を開発し、加齢、てんかんなどにおける神経受容体の役割を明らかにした。さらに本法を正常加齢、アルツハイマー病、複雑部分発作症例に応用して、その特異的な変化を調べた。2.ヒトにおける眠気の発生メカニズム研究:抗ヒスタミン薬による眠気と認知機能障害を例に、ヒトにおける眠気発生メカニズムをH_2^<15>Oと3次元PETを用いて明らかにした。3.受容体ノックアウトマウス研究:ヒスタミン受容体遺伝子ノックアウトマウスを用いてヒスタミン神経系の中枢での役割を明らかにした。4.ヒスタミンH3受容体とヒスタミン・トランスポーターの特徴を明らかにした。特にH_3受容体の新しい創薬について、新しい応用の可能性を提唱した。5.3次元PETを用いたヒト高次脳機能の研究方法の開発した。6.ストレスとメタアンフェタミン覚醒剤におけるヒスタミン神経系の役割について明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] M.Endou,K.Yanai,E.Sakurai, et.al.: "Food-derived activity stress decreased the activity of the histaminergic neuron system in rat"Brain,Res.. 891. 32-41 (2001)
• [文献書誌] M.Higuchi,K.Yanai,M.Itoh,T.Ido, et.al: "Histamine H_1 receptors in patients with Alzheimer's disease Assessed by positron emission tomography (PET)"Neuroscience. 99. 721-729 (2000)
• [文献書誌] K.Iwata,K.Yanai,T.Ido, et.al: "Synthesis of 3-[^1H-imidazol-4-yl] propyl 4-[18F] fluorobenzyl ether ([^<18>F]fluoroproxytan)"J.Labelled Compd.Radiopharm. 43. 873-882 (2000)
• [文献書誌] J.I.Mobarakeh,S.Sakurada,K.Yanai, et.al.: "Role of histamine H^1 receptor in pain perception : A study of the receptor gene knockout mice"Eur.J.Pharmacol. 391. 81-89 (2000)
• [文献書誌] S.Toda,Y.Kaiji,M.Sato,T.Nishikawa: "Reciprocal expression of infant-and adult-preferring transcripts of CDCrel-1 septin gene in the rat neocortex"Biochem Biophys Res Commun. 273. 723-728 (2000)
• [文献書誌] Y.Numachi,S.Yoshida,S.Toda,H.Matsuoka,M.Sato: "Two inbred strains of rats, Fischer 344 and Lewis, showed differential behavior and brain expression of corticosterone...."Annals of the New York Academy of Sci.. in press. (2001)