ヒトの慢性腎不全に至る大きな原因のひとつである腎炎のうちで最も頻度が高いのがメサンギウム増殖性腎炎である。メサンギウム増殖性腎炎モデルである抗Thy1腎炎ラットに、Ginsenoside Roを皮下投与すると、尿蛋白排泄低下作用、血漿尿素窒素と血漿クレアチニンの低下傾向などの抗腎炎作用が観察された。本研究では、Ginsenoside Roを中心に抗炎症作用を担う標的分子を同定し、抗炎症作用の分子機構を明らかとすることを目的とする。 (1)Ginsenoside Roの糖鎖を過ヨウ素酸でアルデヒド化し、アルデヒドカプリングを行いセンサーチップのカルボキシル基に固定化する。この固定化リガンドと腎炎組織抽出画分の特異的相互作用をBIAcoreにて検出した。検出後センサーチップ表面に残された反応物を回収し同定を試みた。BIAcoreにて回収できるサンプル量が微小のため充分な解析には至らなかった。 (2)Ginsenoside Roが腎炎のみならず肝炎にも有効なことから、標的分子の精製と探索にサンプル量を見込める肝炎モデルを作製した。Ginsenoside ROの糖鎖にリンカー化合物を導入しアフィニティークロマトグラフィー用のゲルを作成する。四塩化炭素肝炎ラットの肝織抽出液をGinsenoside Roアフィニティークロマトグラフイーに適用し、溶出条件を変えて結合する標的分子を粗精製中である。粗精製液をポリアクリルアミド2次元電気泳動法にて分画後、TOF-MASにて解析し、各分画のアミノ酸配列を同定し、遺伝子のクローニングを行う予定である。
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