研究概要 |
平成12年度は大型ビニールアイソレーターにて密封された無菌の低酸素室内で、ランニングホイール付きラットケージにてラットを飼育し、低酸素濃度と走行距離の関係を明らかにすること、及びどの程度の低酸素濃度の環境が最も効率よく低酸素馴化がなされるかを観察することである。本研究において、ラットは長期間にわたって低酸素環境に暴露されるので3つの条件、すなわち低酸素環境に強く、運動能力が高く、病気に強い(特に近交係数が高まると、すなわち3世代、4世代になると病気の発症率が高くなるので)ラットの種類を選抜することが重要と考え、これらの条件について検討した。これまでに、3種類の低酸素条件、すなわち、酸素濃度16.5%(二酸化炭素濃度0.03%,窒素濃度,83.47%)、酸素濃度16.0%(二酸化炭素濃度0.03%,窒素濃度,83.97%)、酸素濃度15.5%(二酸化炭素濃度0.03%,窒素濃度,84.47%)を検討した。その結果、運動量が極端に低下しない低酸素条件として、酸素濃度16.0%を採用することにした。ラットの種類に関しては、Wistar系ラット、Fisher-344ラット、SDラット及びHanoverラットが実験動物としてよく利用されているが、運動量の多いラットはWistar系ラットとHanoverラットであることがわかり、そして病気にかかりにくいラットはHanoverラットであるので、本実験ではHanoverラットを採用することに決定した。また、病気への対応として、実験(授乳、離乳、運動、交配、飼育)はすべて無菌室にて行うこととした。生後3週齢で離乳が完了するので、運動は4週齢から開始している。毎日の走行距離の平均値は週齢増加に伴い直線的に増大している。本実験は、交配に失敗すると全て最初からやり直さなければならないので、条件設定を的確に行う必要がある。そのために、ラットの種類、低酸素条件、無菌室の作成などに時間がかかり、現在やっと本実験を開始したところであり、現在は走行距離の測定を行っている。今後、最も運動量の多いオスとメスラットを交配させ、近交係数の高まりと運動能力、酸化能力と抗酸化能力の関係を遺伝子レべルで解明していく予定である。
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