無菌の低酸素室内で、ランニングホイール付きラットケージにてWistar系Hanoverラットを飼育し実験を行った。ラットの交配、出産、授乳、離乳、運動は全て無菌の低酸素室(酸素濃度16.0%)にて行った。親世代ラットは、低酸素+運動群としてオス5匹、メス5匹、低酸素+運動なし群としてオス6匹、通常酸素+運動なし群としてオス6匹、メス6匹の5群に分けた。親世代ラットは4週齢から運動を開始し、8週間の自由運動トレーニングを行った後、最も走行距離の多いオスとメスを交配させ、低酸素馴化1代目のラットを作成した。親世代ラットは子供1世代目ラットの授乳が完了した時点で麻酔後、動脈から採血及び組織を採取した。子供1世代ラットも同様な方法で運動、交配させ、低酸素馴化2世代目ラットを作成した。現在、低酸素馴化5世代目ラットを作成した。動脈からの採血後、肝臓、心臓、脳、横隔膜、ヒラメ筋、ヒフク筋を採取した。さらに脳は小脳、前頭葉、線状体、海馬に分けた。平均走行距離は近交係数が高まるにつれ、減少傾向が見られた(有意ではなかった)。しかし、4世代目、5世代目では走行距離に増大傾向が見え始めた。注目すべきはラット間の平均走行距離の個体差が減少してきたことである。組織の中で最も低酸素に対する感受性が高い脳において、神経伝達物質であるノルアドレナリン、アドレナリン、ドーパミンは全脳においては、低酸素+運動群で最も低く、次に低酸素+運動なし群が高く、通常酸素+運動なしでは最も高い値であった。また、低酸素+運動群では、ノルエピネフリンは前頭葉、エピネフリンは小脳、ドーパミンは線状体で著しい減少が認められ、低酸素+運動刺激が神経伝達物質に及ぼす影響は脳の部位によって異なることが明らかとなった。抗酸化能の指標であるGSH濃度とGR活性は全ての組織において低酸素環境で減少したが、自由運動群で増大した。
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