研究概要 |
蛇紋岩の岩石物性・風化特性・水文特性と蛇紋岩分布地の削剥過程および地形との相互関係を解明することを目的とする,本研究の初年度(平成12年度)の研究実績は以下のように要約される. 1)野外調査を北海道敏音知周辺(神威古潭帯)および兵庫県宮津市周辺(大江山)の2地域で行ない,(1)蛇紋岩および隣接する非蛇紋岩に関する岩盤物性測定(弾性波速度,貫入硬度,シュミットロックハンマー反発度,浸透能),(2)風化帯の分帯,(3)河川流出観測,河川水のpH・電気伝導度の測定,湧出水の採水,(4)植物群落調査を行った. 2)室内では,蛇紋岩および隣接する非蛇紋岩から採取した岩塊について,新鮮岩および風化物質の物理的・力学的性質(圧縮・圧裂引張・剪断強度,密度,間隙率,間隙径分布,P波・S波速度,定水位透水係数)を試験した. 3)野外および室内での岩盤・岩石物性試験によると,蛇紋岩の新鮮岩は硬岩で著しく低い透水係数を示すが,その風化岩は軟岩であり,著しく高い透水係数を示す. 4)地形解析によって,蛇紋岩山地がそれに隣接する非蛇紋岩山地に比べて,(1)相対高度が高く,(2)谷密度が著しく低く,(3)山地斜面が緩傾斜であり,(4)北海道では地すベりの発生方位が南向斜面に非対称的に多いことを解明した. 5)蛇紋岩の特異な削剥地形は,蛇紋岩体には表層に厚い風化帯(しばしば20m以上)が発達し,その高透水性のために谷密度が低くなり,凍結融解などで南向斜面に多発する地すベり移動体によって谷が埋積されることなどに起因すると解される. 6)水文特性と植物群落については,次年度以降のデータを加えて解析することにした.
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