研究概要 |
岩手県宮守地域,三河大野および京都府大江山の3地区の大規模(比高50〜90m)な蛇紋岩砕石場において,野外観察により蛇紋岩を土壌,礫状蛇紋岩,塊状蛇紋岩,葉片状蛇紋岩および新鮮蛇紋岩に風化分帯した.また,旧地表から土壌,風化蛇紋岩をへて新鮮蛇紋岩までを対象に,野外で岩石物性(シュミットロックハンマー反発度,縦波速度,山中式貫入硬度,浸透能)を測定した.各砕石場の風化帯ごとに採取した試料について室内で岩石物性(圧縮強度,圧裂引張強度,非整形供試体点載荷強度,縦波速度,横波速度,定水位透水係数,間隙径分布,スレーキング特性)を測定した.その結果,蛇紋岩は礫状蛇紋岩に至る浅所まで強度低下が小さく,硬岩の性質を示すが,土壌になると強度が急激に低下し,一方,透水性は土壌から葉片状蛇紋岩に至るまで高透水性を示し,新鮮岩では不連続的に低透水性を示すことが分かった.間隙径分布とスレーキング特性からみると,新鮮な蛇紋岩は間隙容量が少なく,ほとんど吸水膨張せず,スレーキングしないことが分かった.野外観察と地形計測によると,蛇紋岩山地は,周囲の非蛇紋岩山地に比べて,斜面が緩傾斜で,谷密度が低く,浅い地すべりが多く,山地平均高度は蛇紋岩体面積が約10km^2より大きい場合には高いが,それより小さい場合には逆に低い,ことが判明した.このような蛇紋岩山地の削剥地形の特徴は次のような削剥過程に起因すると推論される.蛇紋岩の強大な残留応力が削剥に伴う除荷作用によって解放されるために,蛇紋岩が膨張して,引っ張り割れ目が増加し,蛇紋岩は葉片状さらに塊状に破砕する.そのため,葉片状,塊状,礫状の蛇紋岩は高透水性を示すので,地表水が浸透しやすくなり,谷は浅く,谷密度が低くなる.一方,風化すると,蛇紋岩は吸水膨張するので,表層部に浅い地すべりを発生しやすくなるので,斜面は緩傾斜になる.
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