研究概要 |
岩手県宮守村の大規模(比高:約90m)な蛇紋岩砕石場において,採石で切られたステップを利用し,70度内外の傾斜をもつ岩盤表面の65地点において,蛇紋岩の節理密度を計測した.節理密度の計測では,岩盤表面に長さ2mのスケールを水平方向に置き,それを横断する長さ1m以上の節理の本数を節理の走向・傾斜とは無関係に数え,節理密度(単位:n本/m)を計測し,その逆数を平均節理間隔(単位:cm)とした.一方,節理密度計測地点の位置(水平位置と高度)を光波測距儀で測量した.砕石場の掘削開始以前の地形図に,整理密度計測地点を記し,その地点の旧地表(掘削以前の自然地表)からの垂直方向の深度(Z, m)を求めた.節理密度は,旧地表からの深度(Z)が4m以浅では土壌化(粘土化)が進んでいるために計測不能であったが,深度5〜10mでは6〜12本/m,深度10〜30mでは3〜11本/m,深度30〜60mでは1〜10本/mであり,Zが増加するほど節理密度が小さくなるが,その変動範囲の増加が注目された.このことは,蛇紋岩は,深部では節理の多い部分と少ない部分が複雑に混在しているが,浅い部分になるほど節理密度の疎な部分にも新しい節理が生じ,地表に近いほど節理密度が大きくなること示す.このような節理密度の深度方向の変化は,蛇紋岩被覆物質および蛇紋岩の削剥に起因する応力解放によって,深部から浅部に至るほど,蛇紋岩の節理密度が増加し,さらに地表下約4m以浅では風化によって節理が認定できなくなるためと考えた.したがって,花崗岩などの深成岩体とは異なって,蛇紋岩体は深部まで節理密度が高いために,蛇紋岩体の全体が高透水性であり,そのことが蛇紋岩山地に特有の低谷密度の斜面,浅い谷および周囲より高い削剥地形の形成の重要な原因であることが判明した.
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