研究概要 |
本年度は本研究の最終年度であり,研究のまとめを意識しで可視,真空紫外及びX線域での分光計測を行った. 1.昨年度から行っていたX線領域CCD検出器の高速サンプリング(高時間分解能計測)が計画どおり,5msで稼動した.ただし,16bitの最大係数率(65536カウント/5ms/チャンネル)にスペクトルのピーク値が近づくと,プロファィルが歪む傾向にあることが判明した.40kカウント/5ms/チャンネル以下に信号量を抑えることで一応解決したが,CCD素子内での電場の染み込みとそれに伴う電荷の移動がスムーズに行われないことが原因である.CCD検出器が比較的大型なのでほぼ限界に近いのかもしれない.これらは全てソフトウェアの改良で対処した. 2.ここ3-4年間使用し続けてきたコーティングなし背面照射型CCD検出器の感度の経時変化を調べた.結果として,感度の低下はほとんど観測できなかった.固体検出器であるため感度が非常に安定しているものと思われる.しかしながら,ショットノイズ的な背景ノイズは増加傾向にあり,信号入力のないフレームを背景スペクトルとして差し引きすることにより改善は可能であるが,信号強度の弱いスペクトルに関しては観測に問題が生じる可能性がある.LHDは検出器位置での高エネルギーX線や中性子の漏洩が皆無なので,原因は経時変化である可能性が非常に高い. 3.CCD検出器の感度を通常真空紫外分光で良く用いられる2次電子増倍管(Cn-Be第一アノード)と比較した.その結果,2次電子増倍管の感度は,ここ4年間に一桁程度感度が低下したことが判った.第一アノードの劣化が主因と思われるが真空度の維持・管理の難しさも原因している可能性がある. 4.この4年にわたる本研究を通じて,可視,真空紫外及びX線域の分光計測に使用した背面照射型CCD検出器は順調に動作し,原理的に,使用波長領域に制約がないことを実験的に検証した.特に真空紫外域では可視光を利用した分光器の焦点調整に大きく役立ち,研究の進展に飛躍的な進歩をもたらした.本研究で検証された安定した感度特性及び良好な空間・時間分解というCCDの特性は,様々な研究面で役に立つと確信する.
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