近年の携帯用電子機器の急速な発展に伴って種々の二次電池が駆動用の電源として用いられている。しかし、携帯用電子機器自体の重量は年々飛躍的に軽量化が進んでいるが、電池自体の重量は依然として重く、しかも電池切れを起こした場合には、長時間を要する充電をする必要がある。そこで本研究では、電池に変わる電源としてメタノールを燃料とする薄膜型燃料電池を作製するために、メタノール透過性の低い架橋したフッ素系イオン交換膜の作製を試みた。フッ素系イオン交換膜合成の出発物質には、ヘキサフルオロプロピレンとトリフルオロメタンスルホン酸を用いた。プラズマ重合に用いた電極は、容量結合型の平行平板内部電極で、電極間に13.56MHzの高周波RF電力を印加することによりプラズマを誘起した。基板は電極間に置き、基板の電位はフローティング状態になっている。低電力印加条件で、スルホン酸基の導入が認められた。理論的にスルホン酸基が導入されるプラズマ重合反応の反応機構を解析するために、非経験的分子軌道計算を行った。計算プログラムにはGaussian 90を用い、基底関数は6-31G^<**>を用いた。反応中で生成すると考えられる化学種について、ハートリーホック法によって構造最適化を行った。トリフルオロメタンスルホン酸の分解反応を種々仮定して生成物のエネルギーを計算したところ、SO_3Hラジカルを経由する反応が最もエネルギー的に有利であることが明らかとなった。
|