研究課題
本研究では、安定で再現性の良いX線検出動作特性を得るために、従来のSTJ素子上に超伝導マイクロストリップコイルが集積された構造の検出器を試作し、マイクロカロリーメーターに比較して操作が簡便なシステムでも5.9keVのX線を数10eVのエネルギー分解能で検出できることを実証しすることを目的としている。前年度、作製したマイクロストリップコイル集積型STJ素子を小型ヘリウム3クライオスタットにより冷却し、X線応答特性の測定試験を行い、検出信号パルスの観測に成功した。しかしながら、マイクロストリップコイルの電流導入電極のアルミワイーヤーボンディング部において熱暴走が発生したため、長時間にわたりバイアス条件を保持することができなかった。そこで、本年度は、超流動ヘリウムフィルムを利用した冷却によりワイヤーボンディング部の発熱を除去する方法を考案した。超伝導マイクロストリップコイル集積型STJ素子と55FeX線源を小型チェンバーへ取り付け、ヘリウムガスを室温で5気圧以上の圧力になるまで充填し特殊バルブで封入した。この小型チェンバーを、ヘリウム3クライオスタットより冷凍能力が大きく数日間にわたり100mK以下の温度を安定に保持することが可能な小型希釈冷凍機の混合器に取り付け冷却した。STJ検出器の動作温度である500mK以下まで冷却すると、チェンバー内に充填されたヘリウムガスは超流動ヘリウムフィルムになり、熱伝導により素子表面を冷却するので、STJ検出器のバイアス条件を長時間安定に保持することを実証することができた。しかしながら、種々の電気的な雑音の影響が大きく、高いエネルギー分解能を得ることができなかった。
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