研究分担者 |
久保 喜平 大阪府立大学, 農学部, 教授 (40117619)
寺東 宏明 広島大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00243543)
大山 義彦 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30169081)
佐々本 一美 (株)同仁化学, 研究所, 技術本部長
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研究概要 |
発がん物質や活性酸素は様々なタイプのDNA損傷を発生するが,最近の研究から,損傷の発生および修復はゲノム全体にわたって一様ではなく,クロマチン構造や転写などDNAの核内動態の影響を受けることが明らかになった.したがって,損傷の生成と除去(修復)という二つのプロセスがゲノム全体にわたってどのように進行するかを明らかにすることは重要な研究課題である.本研究では,当研究グループがこれまでに開発したDNA損傷特異的な標識法(ARP法)とDNAアレイ技術を組み合わせることにより,ゲノム全体にわたる遺伝子損傷の迅速な分析法を開発することを目的とし研究を行った. 従来のARP法では,試料DNAをARP標識後,マイクロプレートに固相化し,ELISA法と同様にアビジン・ビオチン・ペルオキシダーゼ複合体を加え吸光度を測定していた.遺伝子あるいは特定のDNA領域単位でDNA損傷を検出するためには,さらに高感度な定量法が必要であることから,ペルオキシダーゼ基質として化学発光試薬を検討した.試料DNAをARP標識後,ドットブロット法によりハイブリダイゼーション用メンブレンに固定化し,化学発光試薬を用いて脱塩基部位を定量した.その結果,10^6ヌクレオチドあたり1-2個の脱塩基部位が検出可能であることが明らかとなった.損傷塩基は塩基除去修復酵素により認識され,N-グリコシド結合の切断に伴いDNAに脱塩基部位あるいは鎖切断を含む脱塩基部位が生じる.したがって,損傷特異性のはっきりしている塩基除去修復酵素で試料DNAを前処理し,ARPアッセイを行うと塩基損傷の定量が可能である.この目的に使用するためために,ピリミジン酸化損傷を特異的に認識する大腸菌エンドヌクレアーゼIIIを大量発現し精製した.現在,エンドヌクレアーゼIIIを用いたピリミジン酸化損傷の検出を行っている.
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