研究概要 |
ARP法とDNAアレイを組み合わせた塩基損傷検出のための条件検討を行った。 まず,ハイブリダイゼーション条件として,2種の条件を検討した(条件I:250mMリン酸(pH7.2),lmMEDTA,7%SDS,65℃;条件II:5xSSPE,50%formamide,5x Denhalt's solution,0.5%SDS,42℃)。10^4ヌクレオチドあたり1個の脱塩基部位を含むDNAを調製し,脱塩基部位をARPで標識した。このDNAを条件IまたはIIで12時間インキュベート後,ナイロン膜にブロットし化学発光を検出した。条件Iを用いた場合,化学発光量は未処理DNAの20%に減少したが,条件IIでは化学発光量の減少は起こらなかった。この結果は,DNAに導入したARP標識が条件Iでは不安定であるが,条件IIでは安定に保持されることを示している。したがって,DNAアレイに対するハイブリダイゼーションには,条件IIが適当であることが明らかとなった。 FASL, c-myc, XPB遺伝子(約1kb)をPCR法により増幅し,アガロース電気泳動で精製した。アレイを作製するために,DNAを熱変性後,ナイロン膜にドットブロットし固定化した。10^4ヌクレオチドあたり1個の脱塩基部位を含むc-mycDNAを調製し,脱塩基部位をARPで標識することにより,プローブDNAを作製した。条件IIを用いてプローブをDNAアレイにハイブリダイゼーションし,化学発光を検出した。DNAアレイのc-myc遺伝子に対しては強い化学発光が認められたが,FASLおよびXPB遺伝子では認められなかった。この結果は,ARP法とDNAアレイを組み合わせることにより,遺伝子特異的な脱塩基部位の検出が可能であることを示している。これまでに,損傷特異的なDNAグリコシラーゼ処理により特定の塩基損傷を脱塩基部位に変換しARP法で検出できること示している。したがって,目的に応じたDNAグリコシラーゼ処理を併用することにより,遺伝子特異的な塩基損傷検出が可能である。
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