研究分担者 |
高田 純 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教授 (00274134)
遠藤 暁 広島大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90243609)
石川 正純 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助手 (80314772)
岩本 英司 日新ハイボルテージ社, 研究部長
新田 由美子 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助手 (60171964)
|
研究概要 |
本研究に於いては中性子の生物影響がガンマ線やベータ線よりも格段に大きく、その理由を検討してきた。中性子の影響は、広島・長崎の原爆被爆者、東海村の事故に関連した被曝者で中性子の被曝が見られ関心が持たれてきた。中性子が人体にはいると、主な成分である水の中の水素の原子核である陽子をはじき飛ばす(反跳)。この陽子は電荷を持つので水分の中ではラジカルを生成し、DNAなどに2重鎖切断などの損傷を与える。この損傷はほとんど修復されるが、その一部が修復されずに残り、それが最終的にはがんなどの障害をもたらすと考えられている。最近その2重鎖切断が中性子では集中して起こりDNAが大きく損傷し修復できないとするクラスターモデルが提案されている。陽子の反跳の全線量に対する割合は中性子のエネルギーにより70-80%である。このほかに中性子は原子核反応を起こし、そこから発生する粒子線、ガンマ線、ベータ線などもある。この研究の目的はこの主たる放射線である陽子の影響を広島大学にあるシェンケル型加速器を使って陽子線を放出しそれをタマネギの根の先の細胞に照射しその影響を直接見ることであった。このための照射装置などほぼ完成したが、陽子線の強度の調整と、一様性の調整が間に合わないことが分かった。そのため、中性子を直接当てる実験を行った。照射はタマネギの発芽種子だけではなく乾燥種子にも行い、発芽し種の先の細胞に生じた小核を観察し、その発生率をコバルト60に対するRBEとして求めた。RBEの結果は0.2MeV,0.5MeV,0.8MeV,1.0MeV,2.1MeV(Cf-252)のエネルギーの中性子に対し、乾燥種子で216,186,180,174,150、また発芽種子で45.3,39.1,36.0,31.4,18であった。これらは非常に大きく、また乾燥種子がより大きく興味が持たれる。今後この理由を考察する。
|