研究概要 |
土壌細菌の各種難分解性芳香族化合物分解遺伝子群は、プラスミドやトランスポゾン(Tn)上に担われ、これら可動遺伝因子の動的挙動が、分解遺伝子群の広範な細菌種への水平伝播と分解菌の新規分解能獲得に深く関与する。本研究では、当該遺伝子の動態を司る分子機構の解明とこの動態を利用した新たな環境浄化細菌分子育種の基盤確立をめざし、以下の成果を得た。 1.ハロ酢酸デハロゲナーゼ遺伝子dehH1とdehH2を担う広宿主域プラスミドpUO1上で、dehH2はIS1071複合型のTnHad1内に、TnHad1とdehH1はTn21群のTnHad2内に存在していた。後者Tnは転移酵素と解離酵素をコードしなかったが、Tn21群転移酵素共存下での転移に必須な末端塩基配列を示した。 2.トルエン分解遺伝子群を担うTn4651の転移反応過程の部位特異的解離に必要な領域res内での組換え部位を特定した。解離にはTnpSの関与が必須であり、TnpTは解離頻度を大幅に上昇させた。本解離系は部位特異的組込み活性も備えていたが、TnpTは組込みに不要だった。また、Tn4651型の部位特異的解離系は広範な環境細菌種に存在していた。 3.pWW53上のトルエン分解に関わるTn4656は、80kbのTn4657内で、pWW53の複製装置遺伝子を含む41kb領域で分断されていた。Tn4657内の2つのres間でのTnpRによる部位特異的逆位,がTn4656形成に関与していた。 4.ナフタレン分解に関わるTn4655は、祖先型への複数Tnの挿入とその再編成を経て形成されたことが判明した。本Tn部位特異的解離系のTnpRは部位特異的組込み能も有していた。 5.Tn4655からナフタレン分解初発酵素遺伝子を除去した誘導体をもつ細菌株を受容菌とし、原油汚染土壌と直接混合し、ナフタレン分解能獲得接合体株を得た。接合体は広宿主域伝達性でナフタレン分解遺伝子群を担うプラスミドを獲得していた。
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