下記の3項目について成果が得られた。 1.障害構造の導入によるCry1Aa殺虫タンパク質上の受容体結合領域の解析 Cry1Aa殺虫タンパク質のあるアミノ残基をポイントミューテーションによりシステインに置換し、さらにこのシステインを介して小さな立体障害構造(N-(9-acridinyl)maleimid;以降NAM)を導入して受容体との結合が邪魔できるか否かを検討することにより、カイコ中腸上の二つの受容体(アミノペプチダーゼNおよびカドヘリン様タンパク質)に対するこのタンパク質上の結合部位候補を再検討し、さらに候補領域を狭める試みを行った。その結果、アミノペプチダーゼN結合領域は殺虫タンパク質のドメイン3上にあり、しかも582位に導入したNAM標識で結合が邪魔される範囲にあることが判明した。 2.カイコ中腸上皮細胞上のCry1Aa殺虫タンパク質受容体の解析 Cry1Aa殺虫タンパク質が結合するカイコ中腸上皮細胞膜上の4種類のアミノペプチダーゼNアイソフォームのcDNAをクローニングし、それらの1次構造を決定した。また、それらのアイソフォームに対する抗体を作製して識別を可能にした結果、Cry1Aa殺虫タンパク質は主にアイソフォーム1(BmAPN1)に結合することが明らかになった。 3.ファージディスプレイ系を用いた殺虫タンパク質ライブラリーとスクリーニング系の完成 ドメイン2と3にランダムに変異を持つ殺虫たんぱく質を発現したファージのライブラリーを10^9レベルで構築することに成功した。また、受容体であるカドヘリン様タンパク質を用いて、結合性の高い殺虫タンパク質を発現したファージを結合性の低い殺虫タンパク質を発現したファージの中から選抜するスクリーング技術を、結合親和性の異なるCry1AaとCry1Abを発現したファージをモデルにして検討し、完成した。
|