研究概要 |
バチラスチューリンゲンシスの生産する殺虫トキシンCry1Acに対して抵抗性のコナガ幼虫はCry1Aaトキシンに対して強い抵抗性を示した。このコナガはCry1Abによって最も良く殺虫され,そのLC_50は0.96であった。コナガ中腸BBMVを調整しその蛋白を可溶化してCry1Aa, Cry1Ab, Cry1Acと結合をIAsys及びリガンドブロット法で解析した。興味ある事に最も良く殺虫するCry1Abトキシン膜蛋白への結合は両方法で殆んど検出できなかったが,Cry1AaとCry1Acとの結合は非常に高感度に検出できた。これはCry1Abの中腸への結合が,Cry1AaとCry1Acの中腸への結合機構と全く異なっている事を示している。 我々は,Cry1Acに対するコナガの抵抗性は、トキシン蛋白が中腸上皮細胞に結合した後に細胞膜に陥入出来ない為と考えている。更にこの陥入には上皮細胞膜糖脂質が関与しているというのが我々の仮説である。そこで更に極く単純なリポソームを合成し、Cry1Abと他のCry1Aa, Cry1Acとの結合様式、及び抵抗性コナガと感受性コナガから抽出した中性糖脂質のそれらの結合に及ぼす影響を調査した。リポソームはフォスファチジルコリンとセリンを1:1で混合して作製した。あるいはこれにコレステロール10%重量とコナガから調整した中性糖脂質5%重量を加え作製した。Cry1Aa, Cry1Acはリポソームに結合できなかったがCry1Abは有意に結合が観察された。更にコレステロール含有リポソームへの結合は含まないものへのそれの2〜3倍も高かった。一方コナガから抽出した中性糖脂質はこれ等の結合に影響しなかった。 人工膜,リポソーム系は実際の結合を解析する上で重要な実験系となる期待できる。
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