研究分担者 |
久保 俊裕 (株)クボタ, 鉄管研究部, 副部長
湯浅 晶 岐阜大学, 流域環境研究センター, 教授 (10109499)
山本 浩之 信州大学, 繊維学部, 教授 (60021151)
松下 拓 岐阜大学, 工学部, 助手 (30283401)
井上 隆信 岐阜大学, 工学部, 助教授 (00184755)
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研究概要 |
淡水性付着生物カワヒバリガイの付着力について検討を行った.様々な材料に付着したカワヒバリガイを脱離させるのに必要な力とエネルギーを測定し,材料の表面物性との関連を解析した.脱離に必要な力とエネルギーは,0.02〜2.56Nと0.02〜14.3mJであり,材料によって大きく異なった値となった.総じてガラスのような極性表面では高く,シリコン樹脂のような非極性表面では小さかった.力とエネルギーの測定値の相関は高く,さらにそれらの値はカワヒバリガイの分泌足糸数に比例した.脱離に必要なエネルギーを足糸数で除した値を単位脱離エネルギーと定義すると,足糸の付着円盤が剥離して貝の脱離が生じる場合,その値は小さく,足糸が破断することによって貝の脱離が生じる場合,値は大きかった.付着基盤表面の極性の指標として,表面自由エネルギーの水素結合力成分を測定した.表面自由エネルギーの水素結合力成分が小さい場合は,貝は足糸の付着円盤が剥離して脱離が生じる割合が高いことが分かった.さらに,付着基盤の表面自由エネルギーの水素結合力成分が小さい場合,足糸末端の付着円盤の接着力は小さいことが分かった.数値的には,表面自由エネルギーの水素結合力成分が10mJm^<-2>以上の基盤で,足糸末端の付着円盤の接着エネルギーと足糸一本当たりの脱離エネルギーが等しい領域になる.この場合,貝の足糸の80%は破断し,20%は付着円盤が剥離することによって貝は脱離する.このように,付着材料表面の表面自由エネルギーの水素結合力成分が貝の付着力の支配因子であることが分かった.
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