研究概要 |
【研究目的】 本研究はフッ素やりんを含んだ地下水や河川水などの生活用水の浄化を最終目的とし,水浄化に用いる機能性材料を貝殻や骨などの水産業廃棄物を原料に開発し,その利用法について明らかにするものである。 本年度は環境中におけるりんおよび水産業廃棄物に関する問題の調査,水産業廃棄物を用いた機能性材料の試作を行った。 【成果の概要】 1)環境中のりん問題:我が国においてりん資源は大部分を輸入に頼っている。またその資源は枯渇の危険性が指摘されており,現在確認されているりん資源の埋蔵基礎量(回収コスト$100/トン以下)が2066年頃には消費つくされるという予測があるほどである。りんはフッ素アパタイト(Ca_<10>(PO_4)_6F_2)を主成分とするリン鉱石を硫酸で分解することにより生産されるので,環境中りんをフッ素アパタイトあるいはその類似組成の化合物として固定できれば,りんの資源化も可能となるものと結論づけた。 2)水産業廃棄物の問題:りんをアパタイトとして資源化するためには,りんの他にカルシウム源が必要である。本研究ではカルシウム源に貝殻などの水産業廃棄物を用いることとした。水産業において,貝殻は大量に発生する未利用資源であり,かきに関する一昨年の統計によると,全生産量20万トンのうち,食用のむき身として出荷されるのはわずかに3万トンであり,残りの17万トンはかき殻として廃棄されている。このかき殻の主成分は炭酸カルシウムであり,これを原料に,りんの資源化に用いる材料の合成を試みた。 水産業廃棄物を用いた機能性材料の試作:かき殻に豚骨を加えて加熱処理を施して合成したセラミックスをりん酸塩溶液中に添加して25℃で72時間反応させた結果,液中のりんをほぼ100%除去できることが明らかとなった。このセラミックスの主成分のリン酸四カルシウム(TTCP,Ca_4(PO_4)_2O)が溶液中のリン酸イオンと反応して,水酸アパタイト(Ca_<10>(PO_4)_6(OH)_2)を形成したことによりリンを固定できたものと考えられる。水酸アパタイトはリン鉱石の主成分であるフッ素アパタイトと組成,構造とも類似しており,リン生産に転用できることから,この方法によりリンを資源化できると考えられる。
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