Wntシグナル伝達経路の新規制御分子の同定と臨床応用

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12558080
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 菊池 章 広島大学, 医学部, 教授 (10204827)
• 研究分担者: 岸田 想子 広島大学, 医学部, 教務員 (40274089) ; 岸田 昭世 広島大学, 医学部, 講師 (50274064) ; 浅原 利正 広島大学, 医学部, 教授 (70175850) ; 赤羽 浩一 第一製薬, 創薬第四研究所, 主任研究員
• キーワード: Wntシグナル伝達経路 / Axin / β-カテニン / Axam / SUMO化 / Duplin / 核移行

研究概要

昨年度、Axin、Dvl、β-カテニンの新規結合蛋白質を単離して、それぞれAxam、Idax、Duplinと名付けた。本年度はこれらのうちで、AxamとDuplinの機熊解折を行った。AxamのC末端側は、脱SUMO化酵素Senp1の触媒部位と相同性が高く、脱SUMO化酵素活性を示した。Axamはβ-カテニンの分野促進活性を有するが、これにはAxin結合部位と触媒部位の両者が必要であった。また、脱SUMO化活性を消失させた変異体(AxamCS)はβ-カテニンの分解促進活性が減弱した。さらに、Axamをアフリカツメガエル初期胚の背側に発現されると頭部構造が欠損したが、この腹側化活性にも脱SUMO化活性が必要であった。アフリカツメガエルのWntシグナル伝達経路の標的遺伝子であるSiamoisの発現がAxamにより抑制されたが、AxamCSではその抑制作用は減弱した。したがって、Wntシグナル伝達経路の制御にSUMO化が関与していることが明らかになった。DuplinのC末端側には核移行シグナルとβカテニン結合部位が存在した。Duplinにはβ-カテニン依存性のTcfの転写活性化を抑制し、アフリカツメガエルの体軸形成を抑制する働きがあるが、核移行シグナルを除去したDuplinにはその作用が消朱した。一方、Duplinからβ-カテニン結合部位を欠失させると、β-カテニン依存性のTcfの転写活性化を抑制する作用は消失したが、アフリカツメガエルの体軸形成を抑制する作用は保持された。さらに、Siamoisを発現させると二次体軸が形成されたが、β-カテニン結合部位を欠失させてもDuplinはSiamois依存性の二次体軸形成を抑制した。したがって、Duplinは複数の作用点でWntシグナル伝達経路を制御することが明らかになった。AxamもDuplinもWntシグナル伝達経路の抑制因子として作用するので、癌抑制遺伝子産物である可能性があり、今後ヒト癌での異常を検索する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Hino, S.: "Inhibition of Wnt signaling pathway by Idax, a novel Dvl-binding protein"Mol.Cell.Biol.. 21. 330-342 (2001)
• [文献書誌] Furuhashi, M.: "Axin facilitates Smad3 activation in transforming growth factor-β signaling"Mol.Cell.Biol.. 21. 5132-5141 (2001)
• [文献書誌] Yamamoto, H.: "Inhibition of the Wnt signaling pathway by the PR61 subunit of protein phosphatase 2A"J.Biol.Chem.. 276. 26875-26882 (2001)
• [文献書誌] Kishida, M.: "Synergistic activation of the Wnt signaling pathway by Dvl and casein kinase Iε"J.Biol.Chem.. 276. 33147-33155 (2001)
• [文献書誌] Kobayashi, M.: "Nuclear localization of Duplin, a β-Catenin-binding protein, is essential for its inhibitory activity on the Wnt signaling pathway"J.Biol.Chem.. 277. 5816-5822 (2002)
• [文献書誌] Kadoya, T.: "Desumoylation activity of Axam, a novel Axin-binding protein, is involved in downregulation of β-catenin"Mol.Cell.Biol.. (in press). (2002)