ビメンチンのヘッド領域(VH)には、種々のキナーゼによる特異的リン酸化部位が存在する。そこで、VHを野生型(WT)あるいは不活性型のRhoキナーゼとCalmodulin-dependent kinase II(CaMKII)のN末端に付加したキメラ・キナーゼの発現ベクターを構築した。これらのキメラ・キナーゼを神経細胞に発現させの機能発現におけるキナーゼの役割を解析した。このシステムは、特定のキナーゼ経路を活性化する蛋白質を同定するための有用なツールになり得る。現在までにESTデータベース検索により、一次構造上Rhoシグナル経路を活性化すると予想される蛋白質が複数挙がっている。我々は、これらの蛋白質のうちKIAA380と呼ばれる分子に着目した。この分子は一次構造上Rho活性化領域を有する。KIAA380をVH-Rhoキナーゼと共にCOS細胞に強制発現させ、VH-Rhoキナーゼの自己リン酸化を指標にRhoキナーゼ経路の活性化囚子であることを同定した。さらに研究を発展させ、線維芽細胞を用いた強制発現実験でKIAA0380のDH/PH断片が細胞質中に分布してストレスファイバーの形成を誘導すること、DH/PHとそのC端側に存在するプロリンに富む領域を含む蛋白質断片が細胞膜の直下に局在してcortical actinの再構築と細胞の球状化を惹起することを見出した。従って、Rhoの活性化に伴うアクチン再構成と形態変化が、RhoGEFの細胞内局在により制御される可能性が示された。さらに神経細胞Neuro2aにおいて、KIAA0380のN末端フラグメントを強制発現させたところ、リゾフォスファチジン酸(LPA)依存性の神経突起退縮が抑制された。これらの結果より、KIAA0380がLPA-G_<l2/13>-Rho依存性の神経突起退縮を制御する可能性が示された。
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