研究概要 |
1)マウスセロトニントランスポーター遺伝子発現調節機構の解析 マウスセロトニントランスポーター遺伝子の上流領域の解析により、セロトニントランスポーターのプロモーターには少なくとも3ヶ所存在することを見出した。レポーターを用いたプロモーター活性の測定により、各プロモーター活性は、細胞種によって異なること、また、転写調節因子(CREBなど)による調節機構が異なることを見出した。 2)ヒトセロトニントランスポーター遺伝子多型の機能解析 セロトニントランスポーター遺伝子発現調節部位の11種類の遺伝子多型(14-22回のRepeat配列:5-HTTLPR多型)の機能相関を評価するため、レポーター遺伝子を含むベクタープラスミドに各対立遺伝子断片を組み込み、褐色細胞種由来細胞、サル線維芽細胞、マウス背側縫線核由来細胞(RN46A細胞)などにトランスフェクションし、レポーター遺伝子活性を測定することで、プロモーターおよびエンハンサー活性を評価した。その結果、RN46A細胞においてのみ、5-HTTLPRはsilencerとして機能し、特に15,19,20,22リピートは、他の遺伝子多型に比べ有意に強いsilencer活性を示した。5-HTTLPRのRN46A細胞におけるsilencer活性と気分障害の罹病率に相関は無かった。気分障害の罹患脆弱性に有意な影響を与えることが知られているVNTRは、RN46A細胞において、silencer活性を示したが、多型間の有意な差は見られなかった。このことから、少なくとも我々の方法で測定した遺伝子多型の発現調節活性は、気分障害の発病脆弱性と必ずしも相関しないと言える。
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