研究概要 |
平成12年度の研究では、ラット大脳皮質におけるアセチルコリン神経の活動、グルタミン酸神経の活動を検討した。記憶の障害されたアルツハイマー型早期痴呆症のモデルとして,グルタミン酸のNMDA受容体を非競合的に拮抗させる薬、MK-801、を末梢投与した動物を用いた。このモデル動物は大脳皮質の内、後部内側頭頂葉が特異的に細胞死を引き起こし,人のアルツハイマー型早期痴呆症に類似していることが示唆されている。 本研究では、ラットにMK-801を末梢から投与し,大脳皮質の内側前頭野と後部内側頭頂葉における神経伝達物質の放出の変化を検討した。アセチルコリンとコリンは微量HPLC-ECDを用いる金ラジアル形電極を用いて高感度で、長期間測定できる系を確立した。この方法を用いて測定したところ,前頭皮質と後頭皮質のアセチルコリン放出の変化は異なっていた。この相違が後部神経細胞の障害とどのように関係しているかは不明である。そこでMK-801投与に伴って、グルタミン酸神経が変化していることが考えられたので,脳透析液中のグルタミン酸量の変化を測定したが、変動が大きく、明らかな変化は見られなった。 現在、両大脳皮質においてエネルギー的変化が異なっているか否かを確かめるため,グルコース,乳酸の変化についても検討を計画中である。最近,虚血が脳内透析液中の乳酸量を一過性に増加させ,続いてグルコースが変化するとの報告もあり,MK-801による記憶障害モデルではどのように変化するかを検討している。
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