マウス受精卵前核への遺伝子注入によるトランスジェニックマウス作製において、ゲノム上の特定部位にDNAを挿入するシステムを作るため、Cre-loxシステムを利用し、部位特異的挿入反応の効率を上げる工夫を行った。野生型loxP配列の末端部を変化させたlox66とlox71配列や中央部に変異を加えたlox配列(lox511やlox2272)を組み合わせて用い、ES細胞での部位特異的挿入効率を検討したところ、最もよいのはlox66/lox71とlox2272の組み合わせであることがわかった。次に、受精卵での組換えを試みるため、CAG-EGFP-lox71-Puro-pA-lox511-lox2272というトランスジェニックマウスラインを樹立し、その受精卵に、Cre発現ベクターとlox66-IRES-NLS-LacZ-lox511-lox2272を持つベクターのインジェクションを行なった。862個の受精卵を移植、12.5日目に155個の胚を取りだしてX-gal染色とDNA解析を行ったが、lox部位特異的挿入を起こしている胚は得られなかった。このラインではトランスジーンが複数コピー存在することが低効率の原因と考え、次に、遺伝子トラップ法によって得られた1コピーのみトラップベクター(pU-17: SA-lox71-βgeo-loxP-pA-lox2272-pSP73-lox511)を持つマウスラインで実験を行った。この受精卵にlox66-SA-EGFP-pA-lox2272-pSP73をもつベクターとCre発現ベクターをまぜてインジェクションし、12.5日胚のDNAを解析した。504匹中トラップベクター陽性が262匹、その中でEGFP遺伝子を持っていたものが3匹、その中で標的置換を起こしていたものが1匹であった。予期していたほど組換え効率は上昇しておらず、今後さらなる条件検討が必要である。
|