研究概要 |
細胞骨格や細胞内微小器官などが細胞内でどのように配置されているのかを詳細に知ることは,細胞の機能を明らかにする上で重要である.細胞内の微細構造を知るために,共焦点レーザー顕微鏡で焦点をずらしつつ撮影された映像を積み重ねる方法が用いられてきたが,細胞の厚み方向の分解能が不十分で細胞内部の構造を詳細に知ることはまだ難しいのが現状である.そこで本研究では細胞を顕微鏡下に把持し,これを顕微鏡光軸と直交する軸まわりに回転させつつ様々な方向からの像を記録し,これらの像を基に計算機により細胞内の微細構造を再構成する手法の基礎検討を行うことを目的としている.研究初年度の本年度は細胞把持・回転装置とその制御ソフトウェアを試作した.倒立蛍光顕微鏡下に細胞をガラスマイクロピペットで表面を吸引して把持する.ピペットは細胞回転機構の内筒に取付けられており,外筒は計算機制御の電動3次元マイクロマニピュレータのヘッドに固定されている.細胞回転機構の内筒はフレキシブルカップリングを介してステッピングモータに接続されており,計算機制御により細胞を任意の角度回転させられるようになっている.顕微鏡に取付けられたCCDカメラを介して細胞像を画像処理装置に入力し,二値化してピペット先端の位置ならびにその面積を算出する.ピペット先端が回転開始前の位置から動かないように,また,二値化面積が常に最小値を保つようにマイクロマニピュレータを制御しながら細胞を回転させる.開発した装置を利用して,核をSYTO 13で蛍光染色した細胞を回転させて様々な方向から観察したところ,回転に伴って細胞内部の構造も回転する様子が観察された.しかし,細胞の位置および焦点合せの高速化,画像の質の改善などが課題として残された.
|