研究概要 |
細胞内の微細構造を知るために,従来は共焦点レーザー顕徴鏡で焦点をずらしつつ撮影された映像を積み重ねる方法が用いられてきたが,細胞の厚み方向の分解能が不十分で細胞内部の構造を詳細に知ることはまだ難しいのが現状である.そこで本研究では細胞を顕微鏡下に把持し,これを顕微鏡光軸と直交する軸まわりに回転させつつ様々な方向からの像を記録し,これらの像を基に計機により細胞内の微細構造を再構成する手法の基礎検討を行うことを目的とし,3年間に亙る研究を行った.最初の2年間の研究において倒立蛍光顕微鏡下に細胞をガラスマイクロピペットで表面を吸引して把持し,回転させることのできる細胞把持・回転装置とその制御ソフトウェアを試作した.しかし,細胞の位置および焦点合せの高速化,画像の質の改善などが依然,課題として残されていた.そこで本年度はピペット先端の位置決めをソフトウェアだけでなく,ハードウェアを組合せて行う方式に変更した.即ち,焦点面内のピペットの位置制御をコンパレータ素子を用いて行う方式に変更し,また,焦点制御には従来の比例制御だけでなく,微分制御並びに積分制御も取り入れた.これらの工夫により,細胞にピントを合わせつつ1回転させるのに従来12分を要していたものが,1分で行うことが可能となった.光学系の改良としては顕微鏡を倒立型から正立型で水浸の対物レンズを使用する方式に変更し,画像を改良した.また,細胞を回転させ様々な方向から得られた蛍光像より細胞の内部構造を再構成するアルゴリズムを確立し,トリプシンで基盤から剥離した培養血管内皮細胞の胞体形状と細胞核形状を別々に得て3次元的な像を得ることに成功した.
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