新しいpH応答型ブロック共重合体ミセルの開発とそのガン標的治療への展開

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12558102
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 原田 敦史 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (50302774)
• 研究分担者: 福島 重人 日本化薬株式会社, 医薬品事業本部, 主任研究員 ; 片岡 一則 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (00130245)
• キーワード: 高分子ミセル / pH応答性 / ブロック共重合体 / ヒドラジド基 / アドリアマイシン / 標的指向性 / ポリエチレングリコール / アゾメチン結合

研究概要

本研究においては、細胞内に取り込まれた際の局所pH変化に呼応して、内包された制ガン剤を効率よく放出する細胞内ミクロ環境応答型高分子ミセルを構築し、その表層に標的指向性分子(リガンド)を装着することによって、効率良くガン標的治療を達成するシステムを開発することを目的としている。具体的には、末端にリガンドを装着したブロック共重合体の一方の連鎖の側鎖にヒドラジド基を導入し、そのヒドラジド基を介して制ガン剤であるアドリアマイシン(ADR)を結合させる。ヒドラジド基とADRの間の結合はアゾメチン結合となるためpH変化によって結合している薬物の比率が変化する。すなわち、血流中のpHにおいては安定に結合している薬物が、細胞内リソゾームに取り込まれることに伴うpH低下によって解離し、ミセルから効率よく放出されるシステムの構築が可能である。昨年度前にポリエチレングリコールとポリアスパラギン酸のブロック共重合体(PEG-P(Asp))のP(Asp)側鎖のカルボキシル基にヒドラジド基を導入する合成法を確立した。
本年度は、ブロック共重合体のヒドラジド基へADRをアゾメチン結合を介して導入し、高分子ミセルを調製することに成功した。この高分子ミセルからのADRのリリースを種々pH環境下で逆相HPLC測定により評価した結果、生理的pH(7.4)においてはADRは全くリリースをしないが、細胞内リソソームのpHに相当するpH5〜6においてはADRをリリースすることが確認された。さらに、標的指向性を付与するためのブロック共重合体として、末端にアセタール基を有するPEG-P(Asp)の合成法も確立した。次年度には、標的指向性基を導入したpH応答型高分子ミセルを調製し、生物学的機能評価を行うことによりその有用性を実証する。

研究成果

• [文献書誌] A.Harada, K.Kataoka: "Pronounced activity of enzymes through the incorporation into the core of polyion complex micelles made from charged block copolymers"J.Controlled Release. 72(1-3). 85-91 (2001)
• [文献書誌] Y.Kakizawa, A.Harada, K.Kataoka: "Glutathione-sensitive stabilization of block copolymer micelles composed of antisense DNA andthiolated poly (ethylene glycol)-block-poly (L-lysine) : A potential carrier for systemic delivery of antisense DNA"Biomacromolecules. 2(2). 491-497 (2001)
• [文献書誌] A.Harada, H.Togawa, K.Kataoka: "Physicochemical properties and nuclease resistance of antisense-oligodeoxynucleotides entrapped in the core of polyion complex micelles composed of poly (ethylene glycol)-poly(L-lysine)block copolymers"Eur.J.Pharm.Sci.. 13(1). 35-42 (2001)
• [文献書誌] Y.Nagasaki, K.Yasugi, Y.Yamamoto, A.Harada, K.Kataoka: "Sugar-Installed Block Copolymer Micelles : Their Preparation and Specific Interaction with Lectin Molecules"Biomacromolecules. 2(4). 1067-1070 (2001)
• [文献書誌] A.Harada, K.Kataoka: "Macromolecular Symposia, Vol.172 (Polymers in Medicine)"Ed.J.Kahovec, Wiley-VCH, Weinheim. 10 (2001)