研究概要 |
(1)本研究の結論 チャープレーダの原理を応用したマイクロ波CT(CP-MCT)は周波数領域の信号処理により送受信アンテナ間の直進伝搬成分を計測するが,時間領域での信号処理により同等以上の経路選択性能を備えたCTを実現する可能性について検討した. 試作したタイムドメインマイクロ波CT(TD-MCT)は,0.8〜4.2GHzの帯域でS21の計測を行う.物理的距離と食塩水を仮定して送受信アンテナ間の伝搬時間を推定,またアンテナ前面に金属反射板を置いた反射計測実験等によってコネクタ等の位置を推定,S21の時間波形から計測信号を切り出した.時間領域での処理後,再び周波数領域に戻し,500MHz刻みの周波数ごとにプロジェクションを求めてCT画像を再構成した.周波数の違いによる再構成画像の差異は,信号レベルの大小によるSNの違い,またそれほど顕著ではないが,波長に依存した回折効果の大小が主なものであった.また,1GHzの帯域を持たせた画像再構成では1〜2GHzの画像がSN比に最も優れ,結果的に同じ帯域で動作するCP-MCTの先見性,妥当性が実証された.同じ周波数帯域で評価した場合,TD-MCTの空間分解能はCP-MCTと同一と評価された. (2)タイムドメインマイクロ波CTの実用的意義 生体計測用のCTではインピーダンス整合のため,生体もアンテナも電気的特性がほぼ等しい食塩水の中に浸した状態で計測を行う必要がある一方,タイムドメイン計測の特徴を生かすには超広帯域透過計測を行う必要がある.また,生体組織や整合媒質は周波数上昇とともに損失が急増し,実効的に超広帯域で意味のある信号を観測するのは極めて難しい.食塩水中で超広帯域特性を備えたアンテナを実現することも同様である.TD-MCTは時間領域で送受信アンテナ間の直線経路伝搬信号を取り出す.CP-MCTは同じ計測を周波数空間で行うが、信号周波数がkHz以下と極めて低いため計測が容易である.任意の周波数でスペクトル画像を得たい場合等はタイムドメイン計測に特別な意義が見いだされ,この点にTD-MCTの利点が見いだされる可能性がある.
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