研究概要 |
金属チタンを25x5x1mmに切り出し、この金属チタン試片を1.0wt%フッ化水素酸水溶液及び30wt%過酸化水素水を添加した1.0wt%フッ化水素酸水溶液に浸漬し、表面酸化膜を除去し,この試片を蒸留水で超音波洗浄後、作用電極に金属チタン、参照電極にAg/AgCl電極、対極に曰金を用い、電解質溶液には0.1M Ca(NO_3)_2水溶液を用いる。塩橋には3M KCl-アガロースゲルを用い,ポテンシオスタットで定電位分極した。陽極酸化電位・時間(標準;2.5〜9.5V-1h)、陰極分極電位時間(同;-2 V-10min)とした。電気化学処理後の金属チタン試片は蒸留水を軽く流した後、真空デシケーター中で24時間室温で乾燥させた後,金属チタン試片の表面構造を薄膜X線回折法,フーリエ変換赤外(FT-IR)反射分光法,X線光電子分光法(XPS)、走査型電子顕微鏡(SEM)で調べた。電気化学処理後の表面には陰極分極によって水酸化カルシウム粒子が多数析出しており,陽極酸化によって生成した表面酸化膜(チタニアゲル層)の上に強固に固着していた。擬似体液を用いた(in vitro実験)生体活性の評価により,擬似体液浸漬初期には金属チタン試片表面の水酸化カルシウムは,カルシウムイオンの溶出に伴って消失し,かわって炭酸カルシウム粒子が生成し,12時間以内には,その表面にアパタイトが析出した。さらに長期間経過すると,炭酸カルシウムも消失し,アパタイト粒子が表面を覆い尽くした。陰極分極時間5分以上であれば体液pHを急激に上昇することなくアパタイトを形成することがわかった。今後,in vivo実験を遂行し、生体活性層として最適な表面構造を形成させるための、電気化学処理条件を探索する。
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