研究概要 |
昨年度に引き続き,高生体活性化に及ぼす電気化学処理条件の最適化を行うとともに,骨芽細胞を用いた細胞適合性評価および家兎を用いたin vivo評価を行った。 生体活性に及ぼす陰極分極時間の影響を検討した結果,陰極分極時間が長くなる程,試料表面に電着するカルシウム量が多くなり,同時に擬似体液へ溶出するカルシウム量も多くなった。9.5Vで一時間陽極酸化させた後,-2.0Vで10分間陰極分極した試料(9.5-2.0V_10min)が最も高い生体活性を示したことからこれを基本試料として,陰極分極処理時間の異なる試料(9.5-2.0V_Tmin ; T 陰極分極の処理時間)について骨芽細胞適合性評価を行った。未処理のTi試片,9.5V-2.0V_0minおよび9.5-2.0_0V_10min上で7日間培養後のMC3T3E1細胞数を比較したところ,いずれも約30×10^3個/cm^2で,試料間でその数にほとんど優位差が見られなかった。また,培養液中で析出したと考えられるリン酸カルシウムが9.5-2.0V_10min試料上で局所的に観察された。さらに,家兎の大腿骨への埋入実験で,未処理Ti試片,9.5V-2.0V_10minおよび9.5V-2.0V_5min表面へのアパタイト層の形成と骨伝導性を評価した。埋入四週間経過後の試料表面にはいずれもアパタイト層の形成は確認されなかった。しかし,9.5V-2.0V_10minは未処理試片や9.5V-2.0V_5minに比べて,表面に向かって多くの骨が成長した様子が観察された。以上の結果から,骨伝導性に対して本処理の有効性が確認された。
|