研究課題
本年度は、昨年度構築した基本計測システムの構築を行いて動脈硬化発生初期過程で重要だと思われる、単球接着時の内皮細胞骨格成分の変化と力学特性の変化の関連性、ならびに細胞内情報伝達に関連する一酸化窒素(NO)のリアルタイム計測を試みた。1)細胞骨格成分の1つであるF-actin filament、あるいはF-actin filamentの架橋部に存在するα-actininとGreen Fluorocein Protein(GFP)の融合ベクターを内皮細胞に導入することによって、これら融合タンパクを発現させた。その結果、生きた内皮細胞のF-actin filamentの構造を明確に観察することに成功した。我々は細胞内にGFPを恒常的に発現する単球の細胞株を得ている。現在さらに、内皮細胞骨格成分あるいは単球側に異なった波長の蛍光タンパクを発現させることを試みている。2)NOの蛍光指示薬であるDAF-2を用いて、内皮細胞内NOのリアルタイム観察を行い、単球接着・浸潤時のこれら機能分子の実時間計測を行った。その結果、単球が接着した直下の内皮細胞内NOが局所的に減少していることを見いだした。単球と内皮細胞の相互作用において、NOが何らかの関与をしていることが示唆された。3)単球一内皮間相互作用においても重要な働きをしている細胞内情報伝達分子であるCa^<2+>について、退色の影響が無く定量的で、かつ数十m秒オーダーでの実時間蛍光観察が可能な実験方法の基礎検討を行った。Fura-red(励起488nm、蛍光670)およびFluo-4(励起488nm、蛍光516nm)の混合溶液で内皮細胞を処理してリアルタイム共焦点レーザー顕微鏡で細胞を観察し、さらにFura-redとFluo-4の蛍光強度比を算出したところ、退色の影響が無く、かつ定量的に細胞内Ca^<2+>濃度の解析が可能であった。
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