研究課題
基盤研究(B)
本研究では、走査型プローブ顕微鏡と共焦点レーザースキャン顕微鏡を基本とした細胞の形態・機能発現の複合型動的計測システムを構築し、内皮細胞のマイクロメカニクス計測と同時に細胞接着班構成タンパク、細胞骨格成分、さらにはCa2+、Nitric Oxide(NO)などの細胞内シグナル分子の蛍光観察を行い、動脈硬化発生における内皮細胞のマイクロメカニクスの分子機構を検討することを目的とする。本システムを用いて培養血管内皮細胞の局所力学特性を計測した結果、細胞の辺縁部では核近傍と比べて弾性率が2〜3倍程度大きく、硬いことがわかった。細胞骨格成分の1つであるアクチンフィラメントの分布を観察したところ、細胞中央部には多くの繊維状の構造が観察されたが、細胞辺縁部では密集した状態で観察され、局所弾性率は細胞骨格の分布を反映したものと考えられる。単球付加時の内皮細胞の力学特性を調べたところ、細胞辺縁部、核近傍ともに有意に弾性率が低下し、単球の接着によって内皮細胞が柔らかく変化することが明らかとなった。同時に内皮細胞の細胞骨格成分の1つであるアクチンフィラメントを観察したところ、顕著に減少しており、とくに内皮細胞の辺縁部で減少が目立っていた。このことは、単球の接着によって単球-内皮間になんらかの情報伝達があり、内皮細胞内構造変化を通して内皮細胞の変形能を上昇させたものと考えられる。Green Fluorocein Protein (GFP)ならびにCell Tracker Orangeを用いて、単球と内皮細胞を可視化し、両者の接着から浸潤を実時間で3次元的に観察する実験システムを確立した。単球は早いものでは接着から数分後には内皮下に浸潤することが確認された。現在、単球浸潤過程における内皮細胞のマイクロメカニクス計測を試みている。
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