研究分担者 |
巽 英介 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室長 (00216996)
西中 知博 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室員 (00256570)
本間 章彦 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室員 (20287428)
高野 久輝 国立循環器病センター研究所, 副所長 (60028595)
妙中 義之 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 部長 (00142183)
|
研究概要 |
本研究では,当施設にて開発・評画を行なっている遠心型血液ポンプを用いた補助人工心臓システムに対し,体内にポンプを2個埋めこんで使用する両心補助人工心臓システムへの応用を可能にするポンプの小型化,高効率化,血液適合性の向上に関して工学的検討を行なった.本年度は,まずインペラとモータを一体化したダイレクトドライブ方式の遠心ポンプ形状の概略を決定し,さらに補助人工心臓としての基本性能を満足していることを確認した.次いでポンプ形状の最適化を目指して,流れの可視化ならびに画像処理を用いたポンプ内流れの検討を行なった.試作したポンプの寸法は全長55mm,直径60mmであり,従来の半分以下に小型化され,解剖学的にも容易に体内埋込可能な大きさであった.また,重量は300gと同種のポンプの中でも世界最軽量であった.インペラはセラミックボールを利用したピボットによって上下2箇所で支持され,従来のタイプで問題となっていた半径方向の移動が起きない構造とした.一方,このモデルによる血球破壊量を動物新鮮血を用いた溶血試験によって検討した結果,左心補助人工心臓として使用可能な範囲内であることが確認できた. 一方,このような超小型のポンプは産業用ポンプの設計理論の適用範囲外であり,理論的な最適化は困難である.また,血液ポンプの設計指標は,高効率化だけではなく,血液適合性が最も優先されるべきである.そこで,ポンプ内の血流の停滞部分の解消,ポンプの高効率化を狙ってポンプ内部,特にインペラ内部の流れの可視化を行なった.インペラは高速で回転するため,直接可視化したのでは羽根に対する相対速度が理解しにくいため,直角プリズムとハーフミラーから構成される回転像静止装置を設計し,羽根と共に回転する座標系からながめた流れの可視化を行なった.また,同じ光学系の下でダブルパルスレーザを利用した粒子像流速測定法(PIV法)を行ない,定量的流速分布の計測を行なった.その結果,ポンプ流量が一定であってもインペラ内の流れは極めて強い非定常性を持っていること,インペラ羽根の負圧面側の流速が低速になりがちであることが明らかとなった.ポンプ内の抗血栓性の向上のためだけではなく,インペラに作用する流体力のバランスを向上させ支持力を低減するためにも,さらに詳細な解析に基づいた検討の必要性が示されたといえる.
|