研究分担者 |
大前 英司 広島大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30284152)
片柳 克夫 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20291479)
谷口 雅樹 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10126120)
深沢 知行 日本分光株式会社, 第一技術部, 技術担当マネージャー
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研究概要 |
タンパク質,核酸,多糖類などの生体物質の高エネルギー遷移に基づいた構造解析を可能にするため,昨年度に引き続いて広島大学放射光科学研究センターのビームライン15を用いて,真空および水溶液中で310〜140nmの波長領域で円偏光二色性スペクトルが測定可能な真空紫外円二色性分散計(VUVCD)の開発と整備を行った.分光器のグレイティングミラーが焦げているため新しいものと交換し,光量のさらなる増加とS/N比も倍程度改善された.これらの装置が正常に作動することを標準試料(カンファースルホン酸)のスペクトル測定により確認するとともに,8種のL型アミノのスペクトルを測定し,速報誌Chemistry Letters,826(2002)に報告した.さらに,昨年からの課題であったペルチェ素子付温度可変セルの開発を行い,-30〜70℃の領域で温度可変できるセルの開発に成功した.このセルを用いてミオグロビンの熱変性と低温変性のVUVCDスペクトルを世界ではじめて測定し,Analitical Sciences,19,129(2003)に報告した.さらに,種々の糖類のスペクトルを測定し,論文作成中である.また,ab initio計算によるアミノ酸のVUVCDスペクトルの理論計算を行い,200nmと180nm付近のスペクトルの帰属を行った.また,モデルポリペプチドを用い,αヘリックス,βシート,ランダムコイルのスペクトルを測定し,3種のタンパク質の二次構造予測を行い,X線構造解析結果と比較することにより,真空紫外領域まで測定波長を広げることで,より正確に構造解析ができることを確認した.これらの成果は,日本化学会をはじめすでにいくつかの学会で発表済みである.装置の開発に関しては,まだCDとUV吸収スペクトルの同時測定が課題として残っているが,ほぼ本研究課題の目的を達成し,平成15年4月からの全国共同利用に対応できる状況になった.
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