研究課題/領域番号 |
12559009
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
志水 紀代子 追手門学院大学, 人間学部, 教授 (50079399)
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研究分担者 |
増田 一夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (70209435)
斉藤 純一 横浜国立大学, 経済学部, 教授 (60205648)
千葉 眞 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10171943)
岡野 八代 立命館大学, 法学部, 助教授 (70319482)
矢野 久美子 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 助教授 (70308394)
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キーワード | 「政治化」 / 分断化する世界 / ナショナリズムの変貌 / 9・11以降 / ダーバン会議 / テロと国民国家 / 公共圏 / 正義と和解 |
研究概要 |
2年間の研究の中心テーマは昨今各方面で多用されるアーレント思想について、その本質を各研究者のそれぞれの切り口から追究し、「20世紀」という前例のない戦争と革命の時代と格闘した思想家が21世紀に何を展望していたのかを共同研究で明らかにしていくことであった。 一年目は共同研究者の相互理解の仕上げとして、"Identity, Difference, Politics"のテーマで、アーレント思想をフェミニストの視点から再解釈し直し、斬新な方向付けをしているアメリカのフェミニストの一人、ミネソタ大学のリサ・ディッシュ氏を海外からのゲストとして招いて、東京(慶応大学)と京都(立命館大学)で、シンポジウムとセミナーを開催した。国内ゲストの西本郁子、伊藤洋典、山下英愛の3氏も、それぞれの研究分野で自らが直面しているグローバルな問題を提起し、リサ氏の的確なコメントもあって、大きな刺激と示唆を得ることが出来た。 二年目は一年目の成果をもとに、アーレントの著作がアジアの各国でも翻訳され、若い研究者が輩出しているなかで、さらに視野を広げて海外からのゲストを招き、京都(立命館大学)と沖縄(琉球大学)でシンポジウムとセミナーを開催した。 先ず、京都では、"Politicizing Arendt's Political Thought : How did we read Arendt in90's?"と題して、韓国慶煕大学の徐裕卿、台湾大学の江宜樺、ベルリン自由大学のW・ホイアー、小玉重夫の各氏の報告があった。更に2日後、会場を琉球大学に移して、"The Divided World and Hannah Arendt"と題して、琉球大学の波平恒男氏、島袋純氏をゲストに招き、増田一夫、千葉眞、志水紀代子が一緒に報告を行った。日本の国民国家のバリアの境界線上に位置する沖縄の視点はコメンテーターとなった外国人ゲスト3人にとってもインパクトが強く、特殊日本的な国民国家の強固なバリアに風穴を開ける視点であることが、参加者に共有された。この共同研究を通じて、日本におけるアーレント研究者の横のつながりが出来るとともに、さらに「アーレント」をキーワードとして、奇しくも21世紀の幕開けの年に起こった同時多発テロ、報復戦争というグローバルな課題に、今後ともアクテイヴに関わっていくことの必要性を、ヨーロッパやアジアの研究者と共に、この日本で共有できたことの意義は非常に大きかった。
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