3年にわたる研究計画の2年次にあたる本年度は、当初予定通り、ボリビアのアンデス高地および渓谷地方にあたる、ラパス、オルロ、コチャバンバ、チュキサカ、ポトシ各県所在の83教会を実地に調査した。そのうち、17世紀から18世紀にかけての大規模な壁画装飾が残るカラブコ(ラパス県)、クラワラ・デ・カランガ(オルロ県)、ソラカチの教会(同)、あるいは、いわゆるメスティソ様式のファサード装飾で知られるシカ・シカ(ラパス県)、ヤルビコリャの教会(オルロ県)などが特に重要であった。 今回調査では、約5000枚の資料写真を撮影した。昨年度撮影のものと合わせ、その蓄積は、多くが交通困難な地域に散在する南米植民地教会の装飾に関する、世界的にも際だった資料集成となりつつある。現在、この写真資料を原資に、インターネット上のヴィジュアル・データベースサイトを構築中である(試験運用中。本年4月より、一部常時運用開始の予定)。なお、このデータベースサイトは、将来的にボリビア文化庁美術目録センターとの共同運用を目指しており、目下協議を進めている。 研究分担者・齋藤晃は本年度調査において、18世紀を中心に低地のミッションなどで制作された装飾家具「バルゲーニョ」について、先住民史の視点から重点的な調査をおこなった。また、荒廃の進む僻地教会の保存と文化財保護について、博物館活動の一環として取り組む構想を準備している。 代表者・岡田裕成は、「メスティソ美術」と総称される植民地美術の特徴的装飾様式の、形成過程の再検討を中心に研究を進めた。18世紀を中心に、植民地おいて生じたヨーロッパ・キリスト教美術の種々の変容は、必ずしも先スペイン期の先住民的伝統との融合によるものではないとの観点から、この様式概念の再考作業をおこなっている。 これら研究分担の成果は、平成14年度中に学術誌特集のかたちで公刊の予定である。
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