研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、ベトナムの人々がベトナム戦争をどのように記憶し、それを現在どのように語るのかを明らかにすることである。ベトナム戦争は、1975年4月30日のサイゴン解放で最終的に終わったと言われる。それから四半世紀以上が経過したが、私たち日本人はかの戦争を、たとえばベトナム戦争を背景としたハリウッド映画を通して、アメリカ側の視点から主に理解してきた。それゆえ、ベトナム側の視点を知るということはとりわけ重要である。4年間にわたる研究期間の間に、ベトナムでの現地調査を7回、アメリカでの現地調査を1回行った。そのたびに様々な立場のベトナム人たち(元北ベトナム兵士、元南ベトナム兵士、元民族解放戦線兵士、一般住民、元反戦運動家、国外へ出た元難民等)と接触し、1975年以前の戦争時代の「語り」に耳を傾けた。途中から、「サイゴン解放の日」に現地にいた人々に焦点を当てたり、ベトナムの中部のフエで1970年前後に巻き起こった仏教徒や学生らによる反戦運動に関わった人々に焦点を当てたりした。報告書の中では、すでに論文発表・学会発表を行ったものを再録し(2.期間の発表論文)、また刊行予定の著書原稿から関連部分を掲載した(3.刊行予定の著書原稿)。また現地調査の記録(4.現地調査の記録)と、3人分の聞きとり調査の結果を収めた(5.インタビューの記録)。それらのなかで、いくつかの新たな視点-「死ぬのは恐くない」とか「自分たちは団結して苦しくも楽しい日々を過ごした」とかといった元北ベトナム兵士のパターン化された語りや、サイゴン解放を経験した人々の語りのバリエーションから構成される「事実」についてなど-を抽出した。本研究のテーマは壮大で、戦火が止まない21世紀の世界状況の問題にも繋がっている。この問題をさらに追究していくことが期待されている。
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Gendai no Esprit vol.441
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